こころのふるさと
まきしむ

それはなんだろうか。
それがそうして、わたしは空腹であった
ものを食べるたびにからだは軽くなった
こめかみのあたりから小さな金の糸が入ってきて、部屋の中に『亜麻色の髪の乙女』が静かに広がっていった

次にわたしは自由だった
平原におこったぶらんこにのり風を浴び、眼前を牛が横切った

手を切る度に体は重くなった
あたまの上に茨が置かれてゆく
街を歩いている間一人だった
電柱の脇に植木を置いていった
わたしは何者でもなかった

依然としていのちは続いていた
図書館の水飲み場のようなところに
わたしはよこたわり静かに息をしている
12時くらいで二階の窓から光が斜めに差し込んできた

光の中でわたしは美術館のことを思った
美術館は清潔で澄んでいた
青々と茂る樹木
それらに囲まれて
お昼にオムレツを食べた

依然として苦役は続いていた
求めるものも無くなって行った
後には平らな轍だけが残った
依然としてわたしは何もしなかった
ただ淡々と先人の残した通り道が続いていた

階段を登り賽銭箱の前で手を合わせわたしは祈った
戦いの火がおこらないように
このまま静かな水面がどこまでも続いているように

祈ったあとすぐに帰った
蛙が横切った


自由詩 こころのふるさと Copyright まきしむ 2013-07-21 10:43:52
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