天使の破片
塔野夏子

七月の青い空には漂う硝子の雲たち
手のひらの上には天使の破片
陽射しにきらきらきらめいている

これを僕にくれたのは君だったかな
それがどうしても思いだせない
君がよく口ずさんでいた
夏の歌なら憶えているけれど

あれからいくつもの物語が
生まれたり死んだりした
いくつもの世界を
造ったり壊したりした
でも君の残した気配は
いつもどこかにたなびいてた気がする

(夏の果てに咲く花をさがしに行こう
 Sha la la la la……)

そしてまた七月が来て
手のひらの上には天使の破片
破片だけど時々羽ばたこうとする

それを見ていると思いだすんだ
君の長い睫毛の瞬きを




自由詩 天使の破片 Copyright 塔野夏子 2013-07-17 21:31:59
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