監視者
佐々宝砂

どんなに寒い夜でも
(霜夜ならばなおさらに)
窓を開けておかねばならない
あおじろい月光のもと
こっそりと育ちゆくものたちを
おれは監視する
明るい蛍光灯をつけておく限り
闇の眷属は絶滅危惧種
灯りをすべて消せ
おれは監視する
耳をそばだてる
消滅を定められながら
育ちゆくものたちを
書きとどめておくために
おれは監視する
おれの腕を切り取るがいい
おれの足を断つがいい
それでもおれは目をみひらく
おれの目をえぐりとってもいい
それでもおれはおまえを監視する
おれの皮膚細胞すべてで
おれはおまえを感じとる監視する
開け放つ窓の外に
陰鬱な朝日が顔を見せるまで
闇の眷属よ
おれの友よ同類よ
おれはおまえを監視する


自由詩 監視者 Copyright 佐々宝砂 2005-01-03 03:27:58
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