いつかだった昨日のはなし
ブルーベリー



  闇夜に炎が一筋舞って
  空虚に食われて消えた


  *


  これは引越し、
  要る物と要らない物に分ける
  あれと同じだよ
  マシュマロのような
  ハラワタを詰めながら
  そう囁いて泣き笑う
  僕の身にもなってよ
  先に灼いたのは君だったろ
  焼き椎茸の色をした
  焦げマシュマロを食べながら
  そう頷いて泣き笑う
  灼かれたのは僕だったろ

*

プラスチックの爪先が
炎に融解して
難燃性のアクリルは
遠く異郷の匂いを点ててた
嘘じゃないよ
中指を無遠慮に突き刺す
然したる長さもない凶器が
空虚な胎を埋めて泣く
何もきこえない、そうだろ
何もきかせてくれない
酷く長いカセットテープは伸びきって絡みついて
ヘアパックでも治らなかった君の髪みたいだった

今燃やすよ、今燃やすよ在庫処分の、
錠剤の残り、
空白の手帳、
使用済の 
塩化ビニール




陶磁器の顔色が闇に消え失せ
乾燥地帯に何かの溶液が降り残り
硫化系の臭いが
なつめろを流し込み
少しだけ大人だと思った

おめでとうと言い捨てた



自由詩 いつかだった昨日のはなし Copyright ブルーベリー 2013-07-13 18:47:03
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