いつかだった昨日のはなし
ブルーベリー
闇夜に炎が一筋舞って
空虚に食われて消えた
*
これは引越し、
要る物と要らない物に分ける
あれと同じだよ
マシュマロのような
ハラワタを詰めながら
そう囁いて泣き笑う
僕の身にもなってよ
先に灼いたのは君だったろ
焼き椎茸の色をした
焦げマシュマロを食べながら
そう頷いて泣き笑う
灼かれたのは僕だったろ
*
プラスチックの爪先が
炎に融解して
難燃性のアクリルは
遠く異郷の匂いを点ててた
嘘じゃないよ
中指を無遠慮に突き刺す
然したる長さもない凶器が
空虚な胎を埋めて泣く
何もきこえない、そうだろ
何もきかせてくれない
酷く長いカセットテープは伸びきって絡みついて
ヘアパックでも治らなかった君の髪みたいだった
今燃やすよ、今燃やすよ在庫処分の、
錠剤の残り、
空白の手帳、
使用済の
塩化ビニール
)
陶磁器の顔色が闇に消え失せ
乾燥地帯に何かの溶液が降り残り
硫化系の臭いが
なつめろを流し込み
少しだけ大人だと思った
おめでとうと言い捨てた