巴旦杏
春日線香

女の子が一人で
木陰に立っていて
朝からずっといるし
ここらへんでは見ない子だから
なんだか不思議だなと思う
誰かを待っているのかな
それともかくれんぼをしているうちに
家に帰れなくなった子が
途方に暮れているのかな
ちょっと気になって
声をかけてみようと近寄っていったら
女の子ははっとした表情で
こちらを見て
特に言葉を交わすわけでもなく
わたしも金縛りになったようで
なにを言うでもない
二人とも黙ったままで季節はめぐり
木には赤い実がたわわに実り
下から見上げると
無数の提灯が下がっているようで
女の子の小さな頬も
うっすらと赤かった


自由詩 巴旦杏 Copyright 春日線香 2013-07-13 11:42:29
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