蟻地獄
春日線香

あなたのおうちの
ありじごくを見せてください
お手間は取らせませんから
男はそう言って庭に回り
しばらくあちらこちらと
何ほどか検討をつけていたが
おもむろにしゃがみ込み
ほらこんなところにありますよ
なんて嬉しげに言うものだから
なんだか怖くなって
えいとばかりに肩を押すと
なんの抵抗もなしにすうっと
頭から落ちていき
いつまでもいつまでも落ち続け
奈落の底から時々
手紙を送ってきたりする
それがこの紙束です


自由詩 蟻地獄 Copyright 春日線香 2013-07-12 19:45:30
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