アキレス最低の戦い
和田カマリ

アキレス腱を断裂してもう走れなくなって
陸上部をやめて俺たちのサークルに来た後輩がいた
短距離走者だった奴はクラウチングスタイルから
ロケットスタートを決めようとして全パワーを右足先にかけた
「ビシッ」
スタートと同時に奴の選手生命は終わった

その話を事前に知っていた俺は
サークルの入会挨拶をしていた彼に
「スタートしてアキレス腱を断裂する所を再現してくれ!」
と言った
「はい、良いですよ先輩。」
奴はヨーイ・ドンで
「わぁ〜。」
うずくまる真似をしてくれた
みんなに受けた
みんな笑っていた
俺は有頂天
そうさ
そんな話はネタにしちまえば良いんだよ

だけどそれから
だいぶ時が過ぎた今
その時の奴の気持ちを考えると
俺は
情けないやら
恥ずかしいやら
とても苦しんでいる


自由詩 アキレス最低の戦い Copyright 和田カマリ 2013-07-11 17:48:39
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