飛越とその誇り
平瀬たかのり

 竹柵に
 水壕に
 生垣に
 バンケットに
 すぐに慣れたわけじゃない

 平地競走で勝てなかったから
 障害競走を走る馬になった
 けれど十八回走って一つしか勝てなかった
 そんな馬が
 覚醒したのは明けて六歳
 成しとげた中山大障害三連覇

 もはや障害戦ハンデ斤量は青天井
 立ったのは春の盾を賭けた芝の上
 もとより勝ち目はあまりに薄く
 それでも
 まっ平らなコースに戻ってきた愛馬を
 馬主は、調教師は、調教助手は、厩務員は
 きっと誇らしげに見つめていただろう

 竹柵も
 水壕も
 生垣も
 バンケットもない
 淀の直線を
 後方からゴールに向かって突撃するポレール!
 その様こそが雄姿なら
 力を蓄えろ
 信じ続けろ
 魂を挫けさせるな
 と、照れずに一度言ってみろ

  (ポレール 平成九年天皇賞・春)


自由詩 飛越とその誇り Copyright 平瀬たかのり 2013-07-07 20:34:45
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