父さん
砂木

父の死後 葬式が終わった次の日から
働きに出た私を 奇異の目で見る人もいた
供養が足りないと 言う
しかし 私は働きにでて良かったと思う

泣いてもわめいてもどうにもならないのだ
日常を取り戻す事こそが 私に必要だった
自分にもしもの事があったら すぐ お寺に連絡するように
何か聞いておきたいことはないのか と弟に問い
母や看護師さんには お礼を述べたと言う父
母の名を呼び 私をちゃんづけで呼んだという

苦しがる中 手を握るしかできなかった
最後の時には 間に合わなかった
骨を拾い 葬式をして 私は働いた
他に何ができる できることはない
悲しみに落ち込むより現実と戦う方が気楽
いずれ私も みんな死ぬしかない

けれどじつはまだ 父は林檎畑で働いているはずだ
そうとしか思っていない
お墓に納骨もした 供養もしている
でも 死んだとは思えない

田んぼの中のお墓で 父の骨が暮らす
道路から見えるので 私もいずれは諦めるのだろう
でも今は お墓から作業着で 
林檎畑に行く父しか 想像できない 

今は自由に歩けるね
父さん 

















自由詩 父さん Copyright 砂木 2013-07-07 10:33:04
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