ガラス瓶の惑星
ぎへいじ

サラッとしたワインの水感に そんなつもりでは無かったのだが 安いからなと独り言

一粒一粒 ていねいに
大地の祝福を受けた 柔らかな皮膚の中に有る夢を取り出す

ゆめ

お酒飲む夢…見てます

それは偶然を装ったひとつの賭けで
出来立ての海へ生命の素を投げ込んで 酵母菌を連鎖の頂点に立てる様に仕組みながらも 野蛮な雑菌に怯え かくはんを繰り返す日々の事


連鎖の頂点に立つ

その かめの中では 愚かで滑稽なほどの僅かな糖分を奪い合いながら
彼ら酵母菌もこの息苦しさは何か変だと思うのだが

自分達はまだ豊かな葡萄汁の楽園に居ると信じているから食い尽くすのをやめない

ピリッと澄み始めた液体には もう豊かさなど無いと言うのに

助けてください
救って下さいと聞こえたので
もっと大切に使えよと
白砂糖を入れてやると
また こりもせずに繁栄を謳歌してしまう

止まる事が出来ない愚かさを まじまじ見てやろうと彼らの作り捨てた文明の澱(おり)を捨てては 上澄みを細口ビンに押し込めて
きつく栓をした


もう何も入って来ないし

誰も逃げ出せない

救う善も 舌で転がし味を楽しみながら滅ぼす悪魔も同じ私

糖分と言う資源を掘り尽くし 酸素も食べ尽くして作り上げた美しいアルコールの海原
海を知らない自分でさえ想像できる広がり
葡萄の記憶を残して


この小瓶は ひとつの生命体が到達してしまった終着点か 完成形か
ほんの僅か 酒石酸の朽ちた遺跡を黄金の海に沈め


彼らは もう 必要ない



すみせーん
酔ってしまいました。
ワイン飲みすぎました。
この話しの続きは
ホタルブクロの花が雨に濡れる季節を少し過ぎた
渇いた空気を感じる黄昏時に白ワインを飲みながら


さてと 何処まででしたか今度は大瓶の惑星を この封印を切って滅ぼそう

キャプが吹き飛ぶ
いや キャプをつけたままビンの口が吹き飛んだのに気付いたのは 天井まで噴き上げた液体を見た後で

これは何だ
うますぎるぞ
いや そうではない
この惨状は どうしたんだ

2本目はもっとひどかった指が吹き飛ぶ様な衝撃で
分厚いガラスの壁を内側から圧力をかけて破壊する気体を見た

炭酸

こうして お酒の夢は泡になってしまった

ただそれだけの お話し

太古の昔から
命溢れ出した時代から呼吸とひきかえに
今では強力な火力と化学反応で溢れさせている気体

恐竜達が吐き散らした二酸化炭素は今何処に隠れている



ガラス瓶の惑星の運命と
私達の惑星とは違う

違うが 崩壊への繰り返しの坂道の前で 理由も分からす気がつかないまま ちょっとした弾みで この星のビンのキャプに誰かが
指をかけている

いやいや
よっばらいの戯言ですよ

人類は今のやり方で 何処までやって行けるんだろ

いやいや
酔っばらいの たわごとですから


まだ 隕石は墜ちてこない


自由詩 ガラス瓶の惑星 Copyright ぎへいじ 2013-07-06 22:44:50
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