砂の中の海
るるりら

海の縞模様が 砂の城に 住んでいます。
幸いなことに 泣き方をしらないのです。
今も絶え間無く砂が この街に注がれ続け
この部屋の容積も 埋められて います。


元居た場所を けして忘れない生き物ですから
たとえ 砂の中であるとしても
すこしも 海の匂いを失わないのです。
海の底から見上げた光の またたきを おぼえています。


人はみな海の忘れ形見です。
海の匂いを忘れたことも ときにはありました。
海を失うと こころの中心が陥没するのでした。
たとえ 海の匂いを忘れても すべての子は海の忘れ形見。

その命が 果てるなら 海は哀しむのです。 
海岸で 真夏だというのに桜が咲いたことがありました。
潮が悲しみにさわぐので 桜が咲いたのだと
風が 教えてくれました。

真冬だというのに 北極が凍らない日々が あったとしたら
それは 凍っていた屍が 海を恋しがるからだと
雨が 教えてくれました。
私が海を 忘れたとしても
海は私を 忘れない。
砂の音を褥に眠り、海の匂いを歌うために 私は目覚めます。




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群青メンバーの鮎風さんが、わたしの この詩に 素晴らしい音楽と画像や動画をつけてくださいました。


ぜひ 動画のほうも ご覧くださいませ。
Youtube「砂の中の海 」 http://www.youtube.com/watch?v=xsSGjS1kviU


自由詩 砂の中の海 Copyright るるりら 2013-07-06 22:06:58
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