もつれた毛糸
凍湖(とおこ)

もつれた毛糸をほぐそうと
ひっぱったり、ひっくり返したり
しているうちに
かたい結び目
いくつもできて、みつかります。

ああ、これはもう、すんなりとした一本の毛糸には戻りません。
しなやかで、セーターにも、手袋にもなれた、あのもとの通りの毛糸には、なりません。

白いはさみをひらめかせる。
かたいわだかまり、せめてどうにか、するために。
はさみは、情け。

一本の毛糸に戻そうと
ひっしにまさぐった指先は
赤く腫れ
ひりりと汗を、滲ませる。

わたしとあの子も、おんなじです。
腫れた指先握りこみ
縁切り寺に詣ります。
わたしとあの子、それぞれの
良縁願って。


自由詩 もつれた毛糸 Copyright 凍湖(とおこ) 2013-07-04 18:06:56
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