酷い話
……とある蛙
酷い話だ
身内が横たわっていても
涙一つ出やしない
酷い話だ
悲しくならなければいけない
と自分で言い聞かせても
涙一つ出やしない
酷い話だ
死に顔をじっくり見ても
とても死んだとは思えない
このまま横にいるとつい話たくなる
もちろん涙一つ出やしない
酷い話だ
周りではおろおろ泣いている奴がいる
周りではひそひそ話している奴がいる
お悔やみの言葉を言ってくる奴がいる
俺は涙一つ出ずに
表情一つ変えず応対している
なぁ親父どうだったんだい
あんたの人生は さぁ
なぁ親父 最後は
威勢良く死ねたのかい
いつも言っていたように
なぁ親父
あんたが毎週買っていた馬券と同じように
最後はトントンになったのかい
俺はあんたと一緒に住んでいなかったから
知らないけど
何で突然起きなくなったんだ
なぁ親父
俺には何の挨拶も無しかい
俺の女房の夢枕には立ったらしいけど
なぁ親父
俺はあんたの息子らしく生きているのかい?
なぁ親父 明日には焼かれちまうんだぜ
何とか言ってくれよ