ちりぱっぱ
yuez
とある日曜の昼下がり
窓から白手袋の羽根を伸ばした選挙カーが
殺菌消毒された笑みをひるがえしながら通りを優雅に舞っていた
背後に見えるファーストフード店では
ドライブスルーのマイク越しに女が香ばしい自己主張をしている
「パキパキのレッドホットなチキンを一つ」
レッドホットチリペッパーズの『バイザウェイ』が流れる車内で
女は汗で湿った髪を結い直していた
巻き髪がほろ酔いの西風にばらばらとほどけ
上気したピンクのリボンは舌を垂れてあっかんべーをしている
女はそのままヘアピンを引き抜きついでに
うるさい羽虫のような選挙カーに向かって野次を飛ばした
「いんちきちきんぱっぱ!」
それは何かの公式だったかもしれない
三十路シングルウーマンは素顔に七色のラメをゆんゆんちりばめ
灼けたドライブスルーで運命を悟る
安価な言の葉であっさり千切れ飛んでいくカラー
そして真の安らぎは適当に冷えたワインとDVDにあると
「やっぱりもう一つ」
女はまた強く確信して言い放つ
「うん。それ。レッドホットチキンペッパー☆」