青の断章
中川達矢

青に浮かべる心、青に浸す心。皮一枚のわずかな距離でもあれば、青を想える。眼はいつまでもその姿を見ることができない。


青い青と青くない青。空と海の間を渡る光、白い水平線。色を届ける光。絵の具の青に、絵の具の青を。どれだけ混ぜ合わせても青くならない青。どんな青よりも青い青。限りなく青い青。きみの青とぼくの青を混ぜたら、どれほど青くなれるだろうか。光をさまよう白い青が目を眩ませる。

青い夜空を裏返して夜の青空。海から色を借りた、空、泳ぐ魚。夜を裏返した青、青を裏返した夜、空、泳ぐ魚、眠る。夜の空にうつる青の空、泳ぐ魚、青く、眠る。青の空が夜の空から離れて、眠る、新月、泳ぐ魚、青く、眠る、海に色を返す。夜の青空を裏返して青い夜空。

月が示す航路、空への道、遮る雲、雷を呼び、鋭く、光の道を地上に。ルナの休航、ジュピターの運航、女と男は別々の道を行く。光の道、雲と地上とを繋げるが、己を残さずに、ただ光る、光るばかり。雲の上、光は月を照らして、夜にぼやけた航路を描く、空からの道。

青の旋律が響き渡る、夜、繋がる、音。いつまでか青く、どこまでか青く、繋がる、夜、青の旋律によって、蛙、水に帰る。さいごの合唱、緑の旋律、交わる、青の旋律、水を渡り、色が繋がる、音。青の旋律はいつまでか響き渡る、夜、朝に帰る。水は、青の旋律を残して、緑の旋律を待つ。


青にはなれない青。見られることのない青。音になればいいと寄り添う光。光もまた、見せるだけの色。その姿を見ることができない。


自由詩 青の断章 Copyright 中川達矢 2013-07-02 01:59:19
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