群集の中の孤独
ヒヤシンス


北欧から来たアイスブルーの瞳を持つカモメがこの空を飛んでゆく。
氷川丸に群れている黒い瞳のカモメはそれを全く気にしない。
孤高のカモメがはるばるやって来たというのに。
彼らは群れてはいたが、一体感の欠片も無かった。

私のベンチに孤高のカモメが腰を掛けて私を見つめる。
彼は私の心を見ていた。私も彼の二つの美玉の奥を見つめる。
彼の内には、情熱、求愛、慈愛があり、悲哀、諦念、冷酷があった。
彼は私に前者を求めたが、私は彼に何も求める事が出来なかった。

結局私も黒い瞳のカモメと同じだったのだ。
過ぎ行く日々の中で群れの中に在りながら孤独だった。
勇気ある異国のカモメに報いる術さえも持ち合わせてはいなかった。

群集の中の孤独を求めた魂はいつしかその内面を全てに見透かされ、
うわべだけのはかない孤独を歩む自己犠牲の罪を犯していたのだ。
潤んだアイスブルーの瞳はそんな私に優しく語ってくれた。
皆が一体感を持ち、もっと貪欲に愛を求めよ、と。


自由詩 群集の中の孤独 Copyright ヒヤシンス 2013-06-30 12:20:15
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