記念日に一本ずつ
かんな

ふーふ てなことばは好きではないから
とりあえずの選択肢でお互いよきパートナーでいよう
なんて真面目な顔して言ったら笑われてしまった

どっちだっていいよ 本質は変わらない

というようなやりとりを妄想して書いているわけだけれど
きっと現実と大差ないんだ

けれども手を握りたいというきもちと
実際に手を握り合ったというおもいの差

これいかんせん あまさの度合いがちがう
夜に溶けだした黒糖のような 詩的な比喩をわざとらしく
持ち出してみれば そういうことだ

もうすこしで 一年を迎える わたしたちよきパートナー

よき なんて言ってみるけれど
よくもわるくもいっしょにいられるのがよきパートナーってやつです

わたしが最近すきなふたりの時間と言ったら
車の中の会話というやつで
会話になっていないところが愛すべきふたりの時間
思いついた効果音のやりとり
あ、それ、ドラクエじゃん みたいな
小さい頃わたしは
兄に「適当に歩き回って、敵が現れたらこのボタン連打して」
といわれて楽しくゲームをしていた
という話があって
わがさいあいなるパートナーはこの話をすると
かなしい目でかわいそうな女の子をみるような視線をわたしに送る
レベル上げという
RPGにおける基礎を兄はわたしに伝授してくれたのだ

まあこのへんにして
今ほどパートナーから
これから帰るとの連絡がありましたので

本家の誰それが亡くなったとのことで
初めてかいた香典をいそいそをふくさに包み
出掛けて行ったのが数時間前

ひとはいつか生を全うする
それならばよきパートナーと競い合うようにして
最期というテープを切りたい
しかしそれはまだまだ先であってほしい
ひとは欲深い

記念日に花束の花を
一本一本増やしていきたいという
ささやかな願いをもつ
さいあいのパートナーが
いつか
抱えきれないほどの花束をもってきたら
わたしはそれを受け取りながら
ほほえみたい




自由詩 記念日に一本ずつ Copyright かんな 2013-06-29 20:48:06
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