谷の戸に
雨景の万華鏡をのぞけば 幾何学の
狂い咲く色のはざまに
あのときのアマガエルが いました
肩をはじく雨の
その中を走るのが、好きだと
狂人のように喜びながら
とうに足もクリーツもずぶ濡れの、
つめたい雫を指に落とし、
口づく 戯れごと
「「 ぼくは、おおきくなったら
プロのサッカーせんしゅ に
なりたいです
時にせつに 信をもとむれば、
雨が言った、
「「 水がこんなにも 狂おしく切ないのは
お前の前世は、両生類などでなく
青い鯨だった これは、
進化の話などでなく
お前が女官だった はるか以前の話
いつか アマガエルは、
サッカー選手にならずに 雨の好きな詩人になりました。
誰もがまねのできぬ
運動力を兌換させ 労働者として
名をなす 納税者になろうとはせず、
雨の好きな詩人は、詩作に
兌換することのない 創造を
けして労働とせず それは、
金銭では買えない ゆたかさで、
彼のこころを 満たしました。
言問う
この世には、どこにも
貧しい詩人などいないのです
こんなにも はるかにも
僕たちの心は、そこに書かれた言葉によって
十全に 充足されている