風と踊るもの
ただのみきや
ポプラが空を掴む
悲しみにざわめきながら
母の袖を引く幼子のように
風の指先がかき分ける
激しく 優しく
トランスする巨人たち
幾千万の囁き
言の葉は巻貝を廻る
古の涙から新な星座を模索するかのように
木陰を行く者
若木のように瑞々しく
やわらかな魂よ
風と木々の舞踏に加わるな
幾千万の囁きに包まれる時
目を瞑るな 耳を欹てるな
若い風はその姿を西日で隠し
突然後ろから抱き寄せる
すると魂は空高く連れ去られ
鳥となり
風と睦み合い
二度とは戻らない
歓喜か嘆きか朱染めの鳴声は
暮れの空を裂きながら尾を引いて
一瞬 顔のよう だが残光は弾け
すると一本の若木に身を変えた
その影も人型となって滑り出し
地の果てまでも追おうとするが
影は光に追いつけず
地平線は遥かに遠く
いつまでも囚われ人のまま
風と踊るだけ