風と共に去りぬ
壮佑


コーヒーを飲んでいると
窓に伝書鳩が降りてきた
うん? 私に宛てて?
指にパン屑を乗せて差し出すと
小さな嘴でせわしく啄ばんでくる
ふふ 可愛いやつ
光沢のある胸を撫でてやると
ククルルと喉を鳴らす
足に付けてあるアルミの円筒から
通信文を取り出して読んでみよう
どれどれ
「あなたに伝えることは何もありません」
丸文字で書いてある
はて? 誰が私にこんなことを?
一人でいぶかっていると
「あんたに伝えることなんかないよ」
伝書鳩がややイケズな口調で言う
はあ? それにしてもいったい誰が?
「おまえに伝えることなんかない!」
ついにおまえ呼ばわりでダメ押しだ
その時 窓の外のすべての風が
空のいちばん高いところへ向かって
大急ぎで駆け昇り始めた
伝書鳩は焦った顔になってもう一度
「てめえに伝えることなんざねえっ!」
吐き捨てると
風と共に飛び去った








文書グループ「コーヒーショップの物語」






自由詩 風と共に去りぬ Copyright 壮佑 2013-06-26 20:45:11
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