北の鴎
……とある蛙


初夏の北の港町
突き抜ける青 鳥の舞う空
ビットに繋がれ漁船数隻
塗装の剥げた漁船たち
小さく体を上下しながら
早朝の漁から帰還して
体を休めるまもなく人だかり
そのあたりの漁師たちは
妻を初めとする家族総出で
暗いうちに釣り上げた
その収穫を陸揚げする

港の通りの食堂の
浜辺の見える小出窓に
置かれた古くて大きなラジオ
そこから流れるエレジィは
淋しく悲しい旋律で
波止場につながる道沿いの
黒いショールに包まれた
おカマの頭上を舞う烏

岬の崖に巣くう鳶一羽
烏を避けて何狙う。
港の隅でイワシ食う
猫の丸めた背の上で
じっと浮かんで隙ねらう。

ついに自由な鴎たち
漁船の上は烏の群れ
漁師が放る鰯数匹
それすら鴎にとどかない
ついに彼らは消えるのか
北の空から消えるのか


自由詩 北の鴎 Copyright ……とある蛙 2013-06-25 16:51:08
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