ジェンダー
はなもとあお

【ジェンダー】


そのひとらしさ
家族のまえで
社会のなかで
自分として
どんな役割をになえるのか
女性らしさと母親像は相反しないか
男性らしさと父親像は相反しないか
ひとつしかない顔と身体で
どうやって
無理なく
いくつもの表情を持って生きていけるのだろう
わからない
わたしには、まだ、わからない


子どもを産んだ
そのときに
わたしは母としてうまれた
母として生きるのにその基準をつくるのは
子どもだったわたしのおもい、だ
そしてまた
母親であることだけがわたしを生かした
夫に尽くす女性らしさは
子どもへの教育への矛盾
つまり子どもにいくつもの価値感をつきつけ
それに泣いてきたわたしが内側のちいさなわたしとして悲鳴をあげるから
ともに歩めなくなった
こどもを産むまえの、かわいさを装った従順は、
わたしのこどもを傷つけるな、という牙に変わった
遺伝子の夫は、どこまでも男で、父性は置かれた立場の規律しかもたらさなかった
彼もまた、こどもの自分と戦っていたとしても
夢みて話していた理想像ではなく、厳しさでしか接することの出来ない現実に
わたしは絶望した


男は、男でしかない
子どもを育てる時期でも
妻に女性をもとめる
そしてまた
社会的にも
働く女性を称えたり
それが良妻賢母とされるから
わたしは孤立した
あれこれしながら家族を維持できるほどのキャパシティはわたしにはなかった
それだけの価値の女だ


子どもを産むに到るまでの思想を
わたしは両親からもらった
思想を等身大に比較する時間を持つこともなく
適齢期、という時期を、そのように過ごした
子どもを持つには
自分のなかのこどもを理解する
気持ちの成熟が必要だったと思う
親になることの時期を選べるとして
人間としての成長をちゃんと自分で理解できる時まで
身体は適齢期でも、精神の適齢期はいつなのか個人差があるということだと思う


ところでいま日本に住むわたしは
スーパーや生協の便利さにとても助けられている
社会は、時に、やさしい
母性や女性をちょっとは理解してくれていると思う
働いていても
働いていなくても
女性として何を担っていても
何を担えなかったとしても
お金が解決できることも多い
その点で、貧しさからは、何とか逃れなければならない


問題が循環している
労働と賃金という点について
結婚というものがもたらす
戦争と平和について


戦わなければならない
守るものを守るために
そのために
どれだけ強くなれて
どんな行動ができるかによって
訪れる未来が変わってくる


母という女に
父という男に
いったい何をのぞみますか


地位
名誉
母性
父性
立派さ
かわいさ
ひとのよさ
面倒見のよさ
こまめさ
器用さ
料理のうまさ
話し方
やさしさ
愛情
友情
趣味
カリスマ性
ひとをまとめるちから


置かれる立場によって
発言の方向性は変わるから
人間のありかたの正解を求めるのは難しい
いきやすいか
いきにくいか
多数派で生きられるのか
少数派でしか生きられないのかで
社会との関わりが変わる
社会にはじまり社会におわる
人はひとりで生きていけない
性格
それを活かした生き方を
自分で理解してはやくから準備ができれば
導くひとに出会えれば
何かに秀でていれば
どこかで何とか生きられるだろう
しあわせがなにか
どこから訪れるかはわからないけれど





自由詩 ジェンダー Copyright はなもとあお 2013-06-25 15:47:40
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