新しい夏
なかうち まゆこ
部屋の中 わたしの吐息で満たされていて
蒸し暑くて目が覚めた
普段お洒落なんてしないから
どうしたの?って聞かれて恥ずかしくなった赤いペディキュアを
あれから何度も何度も塗り直した
思い出を反芻しながら
ゆっくりゆっくり歩いて
あの日のプラットホームに着く頃には
すっかり新しい夏になっていた
夏の匂いに 懐かしいと感じて
紛れもなく時は進んでいることに気付かされた
下り列車が勢いよく到着して
なびいた長い髪は、もうあなたの趣味とは違う
さらさらと頬を撫でて
ふっ と
わたしは笑った