アソコ伝 92章
花形新次

タマンキと弟子達が
ニコタマールの街を
歩いていると
路地から
一人の少女が
飛び出して
タマンキにぶつかりそうになった
弟子のハラグローが
咎めようとするのを
タマンキは遮られて
少女に
何故そんなに急いでいるのか
尋ねられた
少女は
「私が幼いころ、父が一旗あげてやるといって
東の方に行ったまま帰って来ません。
私は毎日路地に立って父の帰りを待っています。
私は目が見えないので、幼い頃聞いた父の声に
似た声が聞こえたら、そのあとを追って確かめて
いるのです」
と答えた
じっと聞いていたタマンキの目からは涙が溢れた
その涙を人差し指で掬うと
少女の目に塗られた
すると少女は
突然、見える!見える!
と叫んで路地に駆けて行った
弟子達は
また我らが救世主で
最後のジャーパの王が
奇跡を起こされた
と口々に叫んだ
弟子のハラグローは
「あの少女、誰の声を
父親だと思ったのかな?」
とタマンキに聞こえるように呟いた
タマンキは
顔を真っ赤にされて
この中に
私を裏切る者がいると
言い出された


自由詩 アソコ伝 92章 Copyright 花形新次 2013-06-22 22:23:56
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