子午線をこえる風
月乃助


さだめらしき願いを ひとつ知りました


六月の
嵐にひかえる空は
細心のあやうい平衡と ためらいに似た心地なさを よろ


見あげれば
流れは岩にわかれ
我とはなしに 落ちる水は、龍のようです


右には巨きな栗の木と あとは、
まわりはすべて 新緑のもみじ
名も知らぬ花の亡骸
水辺の岩と かしこまる生鮮の水苔を白くそめている


森に、人が心をいやすのは
生きとし生けるものを育む 森の願いがあるからなのですね


清流のしがらみの向こうに
娘がふりかえった
襟元がすずしげな
白地にぼたんの浴衣に 無地の団扇


昔 森と聞いた記憶は、つぼみを解き


高原から千里をながめる娘の、
「「 あれが安多多羅山
   あの光るのが、阿武隈川
  昔読んだ 詩のまま
  国民宿舎から少し歩くと、夏でもリフトに乗ることができたの


知ることのない 女のすがたを
父となる人は、白黒の写真にライカでおさめた


「「 この小川は、話してくれた烏川ににています


母と連れ立って久し振りにあるく


二十二歳
若かりし娘すがたの母は、浴衣の白が緑に映えて
美しい







自由詩 子午線をこえる風 Copyright 月乃助 2013-06-22 22:03:39
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