小さな路地の先っちょに
灰泥軽茶

肌に艶のある小母さんが暖簾を掲げている
くいっと曲がり
小さな路地に入っていくと
木のこっぱや削り粉が雑然と置かれていて
いい匂いがする銭湯のうらっかわ

すぐ右手には
古びた人気のない小さな神社
樹が二本しか生えていないけれど
木陰が私を包み
いつも立ち止まり息を吐く
そして吸うのは
少しだけ清めてもらえるからだろうか

瘤だらけの立派な樹を見上げていると
てっぺんには鳥の巣らしい枝が積まれている
ぼうっと放心して眺めていると
木の葉と私は風に揺らぎ
優しい光は緑と混じりとろり液体となって
すうっとこぼれ落ちてきては
私の額をつうっと撫でる

目を閉じて流動する暗闇を見続けていると
私は鳥のようになって
この小さな町を自由に旋回して
どこまでもどこまでも飛んでゆけそうな気がするが

のっそりともくもく
いつもと変わらない気持ちで立ちつくす
小さな煙突だけがはっきりと目に飛びこんできて
急にとてもさみしくなり
一目散に目指して翻り翻り
淡い光の先に広がる
小さな路地を通り抜けて大きな道路へと出ていく









自由詩 小さな路地の先っちょに Copyright 灰泥軽茶 2013-06-22 20:30:32
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