しみついた匂い
加藤

街灯が照らす夜道を歩く夢を見て
人並みと揺れる風が小さくひらいた花びらを落とす
目がさめたら残っているものがあるだろうか?

思いは遠い過去にあるけれど
今日の瞬間も必ず遠い過去になる
忘れるままに残るままにあるだろう

さびしいのはかざりを持っていないからじゃなくて
そんな心を持っているから
殺風景な部屋に少しする苦い匂いは
どこからともなくして頭に満ちる
それがもういやでもないのは
自分に似合うものだと知っているから

夜眠りにつくと遠い過去がゆっくりと
甘い香りの花びらを連れて現れる
いつも泣く声をこらえて喜んでいる
気色悪い動物の自分だった

やわらかい光に照らされて優しい時間を過ごしても
体は光にとけて消えない

いつも気色悪い動物の自分だった
それがもういやでもないのは
馬鹿になったからじゃない
夢の向こうに居続けたわけでもない


自由詩 しみついた匂い Copyright 加藤 2013-06-22 00:32:50
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