石狩挽歌
壮佑
コーヒーショップに夏が来て
向かいの席の女子高生が
ブルーソーダを飲み始めた
青い液体をストローでチュー
コップの中身が減っていくにつれ
女子高生は足先から海になっていく
水位は下腿から太ももへ
お尻からウエストへ胸へと上昇し
ブルーソーダを飲み干した時には
頭のてっぺんまで真っ青な海になった
途端にバッシャーン! 身体が崩れて
海水が一気に床へ流れ落ちた
店内はたちまち一面の海になり
セーラー服がゆらゆら浮かんでいる
客達は取りあえず泳ぎ始めた
潮汐と潮流の循環が始まり
セーラー服が沖へ流されて行く
海猫がミャーミャー鳴きながら
セーラー服を追って飛んで行く
すると鳴き声を聴いたウェイトレスが
バタフライしながら唄い出した
(
海猫ぇが鳴くからぁ、ニシンが来るとぉ〜)
かなりこぶしの効いた「石狩挽歌」だ
私は背泳で海猫を空に見送りながら
(赤ぁい
筒袖のぉ、やん衆がさぁわぐぅ〜)
精いっぱいのこぶしで応えた
他の客達もクロールや平泳ぎをしながら
一人二人と合唱に加わってくる
(あれからニシンはぁ、どこへ行ったやらぁ〜)
こぶしの効きまくった全員の大合唱だ
セーラー服はどこへ行ったやら〜
私は立ち泳ぎになると
水を蹴りつつ腕組みして考えた
(オンボロロ〜、オンボロボ〜ロロォ〜)
このぶんだと次の曲は
「兄弟船」がいいかも知れん
※文書グループ「コーヒーショップの物語」
※( )内は「石狩挽歌」の歌詞(作詞:なかにし礼)
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コーヒーショップの物語