箱庭 一晩目 〜夏〜
黒ヱ

〜永遠にすれ違う 一番不幸な彼女のお話〜


暮れ入り延びる季節 蒸しの熱を孕んで
日には烏が 夜には虫が
またあなたを具現しようとする

長い月を 糸だけで繋がるは 寂しさ
「本当は お互いに何を求めていたのか」
今では もう 思い出せない

幾度となく離した迷子 
「あなたが言ったから」
終には もう戻ってこれなくて
散る その葉もないままに 
幹だけが 太く長く

想像の出来得ぬ この先には
きっと何もないのだろう
この本心を 何も飾ることなく
虫の音に乗せて 届けることが出来たなら

「今はでは もう それが出来ない」

話してよ この先の物語
だんまりのひとと 無言でせがみ続けるひと
遠くの夜に また想いを投げて
帰ってくればいい

帰ってこなくても それはそれでも いい
あなたに幸あれ
あなたが幸せなら それでいい


自由詩 箱庭 一晩目 〜夏〜 Copyright 黒ヱ 2013-06-20 06:09:49
notebook Home 戻る