手紙
石瀬琳々

まっさらな春の手紙を開封す花びらこぼれていちめんの花


雨のように心は君をおぼえてるインクのにじみ幾度もなぞり


桜闇何を待ちわびあの日からかごめかごめの輪のなかにいる


雨でした、泣き濡れたまま奪ってよくちびる触れたその場所へ君


恋しいと空行く風にしたためる若葉揺すれて青い切手を


さよならの五月のかもめ便箋の白い海には愛するの文字


わが小鳥血を流し鳴く赤色せきしょくの薔薇よ答えはどこにもなくても


はつ夏の森をひらいて雫するみどりの馬のギャロップかるく


(元気です)思いひとつを投函すいつかは胸に届いて風よ







短歌 手紙 Copyright 石瀬琳々 2013-06-19 13:48:05
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薊道