宇宙ひよこ
ただのみきや

 今夜の月は何か変だ

と 思ったその時
小さく ひびが入り
――欠片が落ちた
何かが動いている

 えっ ひよこ?

一生懸命
殻をつついて
転がりながら
可愛いらしい姿が
見え隠れして
なんとも感動的なシーンだ
ついにはすっかり
殻から出て やばい
涙が出そう

 ああ 頑張ったね
   誕生おめでとう

その時
ひよこと目が合った
ひよこはピヨピヨ鳴きながら
夜空を渡ってこっちにやって来る

 《もしかして刷り込み……

ひよこは初めに見たものを
何でも親と思い込む

 《そうか おれを親だと思って

しかしいったい
どれだけでかいのか
最初 月くらの大きさだったのに
近づくごとにどんどんでかくなって――

 《なんてこった!

夜空が一羽のひよこで埋まってしまった
このままでは地球が潰れてしまう
人々はまっ黄色の夜空にパニックを起こし
地を揺るがすピヨピヨ衝撃波に震え上がっている
今や生暖かい突風が激しく吹き荒れ
あちこちで建物が倒壊し始めた

おれは地球を救うべく必死に叫んだが

 「めっ! あっぷでちゅよー
    い け ま せ ん! 」

心はすっかりママになっていた




自由詩 宇宙ひよこ Copyright ただのみきや 2013-06-18 21:44:08
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