りりあん
そらの珊瑚

ぷらすちっくの小さな筒型の編み機には
五つの突起がついていて
人造絹糸を星のかたちに結わえたら
それが
りりあんの始まり

食べ散らかした夏蜜柑の皮
白黴の生えた白パン
蟻の住処は大洪水
立ちのぼる白い煙だけが
生きている証のお線香
頭だけ錆びている古釘
喉の奥で蘇る緋色のルゴオル
雨の降る日は
留守番しながら糸をたぐる
そうやって
潰した時間が
長いしっぽになって出てくる
それが
りりあんの途中

むかでが暗い土間を走り去ってゆく
あれは足なのか手なのだろうか
もしも手であるならば
いったいいくつのしっぽができることか
色とりどりのしっぽは
雨が止んだら虹になる
あれは人間が捨ててしまったしっぽだよ
これはさ
足であって
手にもなる
捨てられないから増えただけ
むかではそう言ってむかで星になった

それが
りりあんの終わり




※「詩と思想」2014.3月号で浜江順子さんより入選をいただきました。
 (多少推敲しておりますが)


自由詩 りりあん Copyright そらの珊瑚 2013-06-18 08:43:47
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