こがね さまよい
木立 悟







幼い虹が
水たまりを駆けてゆく
窓を流れ 昇る曇
誰かが何かを読む声が
水路の終わりに響いている


空に迷う鳥の声
白に降りる白の声
割れた渦にざわめく森
問うまなざしを重ねゆく


雨と霧が
色と音を連れてゆき
灯をはじく灯は
さらに明るく夜を失う


柱の端の闇
廃屋から流れつづける水
海という名の浅い皿
夕べに目覚め 戸惑うたましい


家の裏にまわる径
雨と雨がすれちがい
煙の花を降らせゆく
もとめるたびに消える径


午後の蓋の下
水に降る青
ひらく花の
ひとつひとつを見つめる鳥


緑の筆を捨てながら
河口へ向かうほころびたち
よどみよどみ 砕け散り
風を描いた絵はすべて
風に風に還りゆく


あたりを覆い
双子を創り
葉擦音に冷え
午後を終える


なかば こがねに染まる径が
底へ底へ下りてゆく
暮れる暮れ 白い壁
扉を閉める淡い花の手


よけいなものたち
わだかまりたち
まだらな水の径を往き
幽かに乱れ またたきながら
うたうようにさまよいはじめる





























自由詩 こがね さまよい Copyright 木立 悟 2013-06-16 17:16:02
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