夢か現か幻か
初代ドリンク嬢
眠ってすごせれば楽しいかもね
男がうちに来たのです
「酢は入りませんか」と
ああ、
酢売りか...
そう思って
「入りません」
と言おうと玄関に行くと
男は
強引に入ってきました
男は包丁を持って家の中に
ドスドス上がって
台所からトイレ
子ども部屋まで誰かいないか探し始めました
たまたま
私と
犬以外はいなかったのですが、
あの男が来て以来
うちには誰も
帰って来ません
あの酢売りの男が
私の家族をどこかで殺してしまったのかもしれません
だれも
帰ってこない
そんな妄想を抱きながら
私はお昼のワイドショーで
「酢売りの男だからと安心してはダメですよ
ドアを開けてはいけません」
と言っていたことを思い出した
外では、
白塗りの男が演説をしていた
太陽の高い真夏の昼下がり
誰も聞いていないのに
白塗りの男は声を張り上げていた
汗で白が剥げて
少し、日に焼けた肌が見えていた
相変わらず
汗が吹き出るような暑い午後
私の犬もいなくなった
多分、
殺されたのだと思う
「酢売りの男」か「白塗りの男」だと
思った。
どちらが
殺したのか
わからない
だって
私は
いつでもゆめうつ
夢の中でご飯を食べれば
それでお腹は膨れるし、
夢のなかではすごく働き者
それが夢なのかわからないけど
いや
もしかしたらすべてが夢で
犬もいつも場所で眠ってしまってるだけかもしれない
私が見た「酢売りの男」と「白塗りの男」
ゆめうつつの境目は
見分けられない
どっちがうつつで
どっちが夢なのか
眠りにつこう
眠ればわかるはず
私のうつつがどこにあるのか
夢の時間
夢とうつつの間を行き交う
酢売りの男が本物なのか
白塗りの男が偽物なのか
私のかわいい子どもたちは
どこへ行ったのか
酢売りの男は家捜しすると
だまって出て行った
私には目もくれなかった
白塗りの男は
消えていた
どっち?
私は仕事をして
家事をして
日常を生きている
うつつの中で見る幻
夢の中で見るうつつ
どっちが
本当なのか
玄関のチャイムがなった
私はドアを開ける
それは
私の家族を奪った人
「酢売りの男」か「白塗りの男」
それは
どれも
私の夢で
私の幻で
私のうつつだ
そんな風に生きている