トワイライト
村正

欠けたカップを握る

懲りずに思い出していた

ちょっといいガテマラを買ったのに

ちょうどいい自販機で買った缶コーヒーを

彼はベランダで飲み干した

あの昼の滲みが窓にうつる

もうすこし朱ければ様になった

そして彼は繰り返す

タバコに火をつけて

灰にしない思い出を選んでいる

誰にも言えないただいまを

けむりに巻いて

特別でないことを知ってしまった

どうにか君に知らせたい

ショーケースの果てを

悩み抜いた先に落ちた朝も

灰を踏みにじっていた

グラデーションの先はわからない

タバコに火をつける

サンダルを焦がした灰

夕餉へ歩く二つの影

離れるな

つなげない日のために

隠された地平とうるさい街灯

叫びたくなった

あげたかったのは滲みの髪飾り

待つから焦がれていく

避けようのないすべてには

いつも猶予があった


自由詩 トワイライト Copyright 村正 2013-06-14 14:59:15
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