孤独
青園ルカ
夜中、雨音で目が覚める
キッチンテーブルで煙草を一本吸う
暗闇にたちのぼる煙に
一匹の黒い魚が遡ていく
勇ましいその魚影は
たぶんマラッカ海峡で
海賊たちと渡り合い
インド洋に出て行くのだ
マダガスカル沖で
シーラカンスのような
古代魚になってだれにも見つからず
生涯を閉じるのもいいね
でも、もしかしたら
アリューシャン列島が凍結する前に
無事に北極海へ出るかもしれない
黒い魚はシャチになって
獰猛に世界を生き抜いていく
弱いものを食って食って食いまくって
満腹で生涯を閉じるのだきっと
だから、あたしは一本の煙草を吸い終わり
無数の折れた煙草のように
古いアッシュトレイにこすりつけて
源流を消滅させる
もう、ここに帰ってこなくていいんだよ
そして、いつものように
このテーブルで物思いにふける
そんな人生も悪くない
悪くないんだ
と思いながらちょびっと泣く