孤独
青園ルカ

夜中、雨音で目が覚める
キッチンテーブルで煙草を一本吸う
暗闇にたちのぼる煙に
一匹の黒い魚が遡ていく
勇ましいその魚影は
たぶんマラッカ海峡で
海賊たちと渡り合い
インド洋に出て行くのだ
マダガスカル沖で
シーラカンスのような
古代魚になってだれにも見つからず
生涯を閉じるのもいいね
でも、もしかしたら
アリューシャン列島が凍結する前に
無事に北極海へ出るかもしれない
黒い魚はシャチになって
獰猛に世界を生き抜いていく
弱いものを食って食って食いまくって
満腹で生涯を閉じるのだきっと
だから、あたしは一本の煙草を吸い終わり
無数の折れた煙草のように
古いアッシュトレイにこすりつけて
源流を消滅させる
もう、ここに帰ってこなくていいんだよ
そして、いつものように
このテーブルで物思いにふける
そんな人生も悪くない
悪くないんだ
と思いながらちょびっと泣く


自由詩 孤独 Copyright 青園ルカ 2013-06-13 03:27:36
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