エリちゃんの六月
ざらざらざら子


ともだちが予言してた、エリちゃんは爪が割れたらAV女優なるんだよって、それ、ほんとうだった。


教室でエリちゃんの爪が割れてほんのすこし血がにじんだ、エリちゃんは痛くないですよって顔をしてたけど、ほんとうはすごく痛かったと思う、だってその日は雨で、傷口がすぐに乾くなんて事はなかったから、窓際の席のやつらは知らん顔で、外に咲いてるアジサイを見てる、アジサイの上を這う蝸牛のつのが指に見える、いやらしい、誰も絆創膏を持ってない、保健室へ行って寝てればエリちゃん、爪が割れたくらいでなにいってるの、割れてないやつにはわかんないよ、静かにしてください授業中です、古典の先生の眼鏡、指紋まみれ、わたしの顔見えてますか、先生、ここがわかりません


わたしの唇にカビが生えた、六月だからしかたがないけど、鏡の前で泣いてしまった


ネット上でエリちゃんの裸は記号になって男の人を楽しませてる、腰からお尻にかけての曲線がエロいね、流れるかんじ、エリちゃんそんなに痛いなら保健室で寝てなよ、放っておくとカビが生えるよ六月だから、早退して病院に行けばいいよ、掘り起こさないで、わたしのはだかは深海に似ている、産卵したいの、エリちゃんが笑う、でも爪が割れたから駄目みたい、月が揺れてる、雨に打たれて、エリちゃんの胸に男優が顔をうずめる、指に似てる、古典の先生は誰の顔も見えてない、絆創膏も持ってないのわたしたち


となりのクラスの岸本君、エリちゃんのこと好きなんだって


自由詩 エリちゃんの六月 Copyright ざらざらざら子 2013-06-12 23:48:39
notebook Home 戻る