歯車とコレクター。
元親 ミッド

バーカウンターで一人呑んでいると

ひとつ空席を挟んで 右隣のサラリーマン風の男が言った。



「どうせ俺は会社の、一つの歯車に過ぎないからさ」と。



おいおい、冗談じゃないぜ?

機械ってのはなぁ 歯車一個欠けたって

動かなくなっちゃうもんなんだ。

一個一個の部品を 丁寧に定期的に

チェックして 手入れして

時には 修理したり 部品交換したりしないと

機械ってのは ちゃんと動かないもんなんだ。

一個の歯車でも、それがとても重要なんだ。

いらない部品なんて はじめっからついてたりしない。

そこにある部品は ちゃんと役目があるから

そこにあるんだ!



・・・と、思ったけど 言わずにおいて

タバコをぷかりとふかした。



サラリーマン風の男は続けて言った。



「どうもね、こうも不幸なことが続くとさ

もーやる気もおきなくなっちゃうよ」と。



おいおい、勘違いしてないか?

お前はただ単に、その身に起きた不幸ってやつを

並べて、眺めて、悲劇の主人公ってのに

酔っているだけじゃねぇか。

そうゆうのをな「不幸コレクター」って言うんだぜ。

わざわざ自分で不幸を集めてるだけだってことに

はよう気が付けよ。

生きてりゃよ、色んな事があんだよ。

不幸だ、不幸だって思っていても

本当はな、小さな幸せだって、結構そこかしこに

あるもんなんだぜ。

そんな小さな幸せをよぅ、よぉく瞳を見開いて

探してみろよ。

存在感のあるでっけぇ幸せなんて、そうそう無いぜ。

小さな幸せいっぱいみつけられりゃあよぅ

それはそれでハッピーになれるもんだろうがよ。



・・・と、思ったけど 言わずにおいて

グラスのウィスキーをちびりと呑んだ。



バーは、今日もいつもとかわらず

ジョンコルトレーンからマイルスデイビス、

ソニーロリンズ、ビルエヴァンス、ディジーガレスピー

が流れていた。


自由詩 歯車とコレクター。 Copyright 元親 ミッド 2013-06-12 23:10:31
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