家にいた方が良い
番田
不可思議な街の中を歩いていた。不可思議という意味、それ自体のことを考えながら。いくつもの角を曲がりながら歩いた。カラオケの、もう料金を値上げしていた看板。結婚した友達からは、あいまいな内容のメールがきた。ベンチに腰を下ろすと蚊が寄ってくる。それに、今日は日差しが強すぎるようだった。あそこのちらし寿司を食べたいと思った。散歩に出たのはやはり無駄だったのかもしれない。あれは尾崎豊の格言。80年代のマイブームの歌がむねをかすめた。無印良品に、こんなめかし込んだ格好で来ても良かったのだろうかと思う。そう思うと口元からほほえみがこぼれる。周囲のお菓子屋さんでケーキなどを買う人の姿はない。そして無印で買うような人の姿自体もまばらだった。購買意欲を持たせるものは何もない。思い起こせばカラオケに入ることもできなかった。セブンの雑誌は読みたいとは思えないような表紙ばかり。デジモノステーションの中身はカタログみたいだった。胸をうならせるような女優も、漫画もどこにもないのかもしれなかった。そして昔の方が異常だった。魅力的なものがあふれ出るほどにあったころのほうが、狂っていた。