オムライスなんて大っ嫌いだっ
nonya


ケチャップ切らしちゃってと
大人の笑顔で彼女は言った

僕の目の前に置かれたのは
ケチャップがのっていない黄色い肥満体だった

まあいいさとスプウンを入れたのだが
腹から出てきたのは赤と黄と緑だった


切れた


テーブルをひっくり返してやろうかと思った

どうしてミックスベジタブルなんだっ

これはオムライスなんかじゃないっ
と言おうとしたがオイシィ?と聞く彼女
の上目づかいに肯いてしまった自分に


焦げた


ビール切らしちゃってと
大人の笑顔で彼女は言った

コンビニへ駆け出す彼女の後姿を
見送っていたら急に口直ししたくなった

それがすべての終わりで始まりだった
それがさんせいのはんたいだった

冷蔵庫を漁るドロボウ猫が探し当てたのは
でっぷり太ったケチャップの容器だった

ケチャップのど真ん中に太マジックで
書いてあったのは見知らぬ男の名前だっ

どこからどう見ても
触っても
叩いても
なだめすかしても
紛れもなく正しいマイケチャップだっ


切れた


僕はマイケチャップの首根っこをつかむと
固太りの腹をぎゅうんと握り締め

シンクに
ぶちまけてやったんだっ
シンクを
血の海にしてやったんだっ
シンクに
捻じ曲がった見知らぬ男の名前を投げ捨てると
僕は部屋から飛び出した


飛び出して


走って


逃げて


泣いて


焦げた


アレから半年も経ったというのに
僕はまだ子供のようなしかめっ面で
夕焼けを見るたび叫んでしまいそうになる



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・黄黄黄赤赤赤黄黄黄・・・・・
・・・黄黄黄黄黄赤赤赤黄黄黄黄黄・・・
・黄黄黄黄黄黄黄赤赤赤黄黄黄黄黄黄黄・
・黄黄黄黄黄黄黄赤赤赤黄黄黄黄黄黄黄・
・・・黄黄黄黄黄赤赤赤黄黄黄黄黄・・・
・・・・・黄黄黄赤赤赤黄黄黄・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



なんて

大っ嫌いだっ




自由詩 オムライスなんて大っ嫌いだっ Copyright nonya 2013-06-08 15:40:05
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