ことばがわからなくなった詩人のはなし
はなもとあお

泣いていた
意味不明のことばで
ただ
泣いていることだけが伝わっていたと思う


ことばがわからなくなったみんな
なにかを言っていた
けれど
どんな有名な詩人も
どんな活躍している詩人も
ないしょ話ばかりで
なにも教えてはくれなかった


わたしには、泣いているわたしを、ただ、みんながわらっているようにおもえた

ことばは、あそぶものではないかも。
しんけんに、むきあうものかも。


ことばは、ひとがひとをうごかしたりする。それが、こわい。


はなすと、りかいが、ふかまる。それでいいってことかな。


何がしたいの?
何をするか、だ。
わたしが理解した言葉はそれだけ。


あとはお会いした時に、
お前はがんばれ
て、いわれたこと
こころに残ってる
みんながわらって
わいわいしてた中で
幽霊みたいに
ふらふら
詩人の中に出かけた日のこと
みんなが帰ったあと
色紙をかいてもらって
それを
お土産に帰った
迷子のあいだ
書き続けてくれた
どんな有名な詩人よりもたいせつな詩人の詩集と
ふたつ
いまも宝物


ことばがわからなくなった

少しずつ
ないしょ話もできるようになったけど
いまもまだ
迷子の途中


つたえたい
そのおもいだけが
わたしをうごかす


ようやく泣き止んだよ


今日は、ただ、それだけを伝えたくて


詩が、人を、傷つけるものじゃないって
いえたら
詩の集う場所は
また姿をあらわすのかな


たとえば
詩に
いちど絶望した
詩人の
詩が
だれかのこころに届くものになった時には





自由詩 ことばがわからなくなった詩人のはなし Copyright はなもとあお 2013-06-06 21:00:15
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