哀想笑い〜三月の晴れた日〜
中村 くらげ

血にまみれたままでは
だれも救えないと思い
顔に包帯を巻き付けてみた
そして何も見えなくなってしまいました

見えなくなればいいと望んだこと
心の奥で気付いていたのに
それからも逃げています

蚊に喰われただけの瞼を腫らして
いかにも傷付いたように装うことで
自分を護っていました

目を背けていないフリは
しっかりと板についていて
同情を振り撒く表情が
能面のように張り付きます


押し寄せる波の音
柔らかな日差し
広がっていく荒地
続く菜の花畑

テレビが光を放つだけで
その映像には光はなく


誰か助けてください
僕は痛いくらいに平常だ

渦巻く不幸の中で
ただ一人健康だ

今日もまた
生きてしまっている

にやにやと
哀しく


自由詩 哀想笑い〜三月の晴れた日〜 Copyright 中村 くらげ 2013-06-01 02:25:30
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