哀想笑い〜三月の晴れた日〜
中村 くらげ
血にまみれたままでは
だれも救えないと思い
顔に包帯を巻き付けてみた
そして何も見えなくなってしまいました
見えなくなればいいと望んだこと
心の奥で気付いていたのに
それからも逃げています
蚊に喰われただけの瞼を腫らして
いかにも傷付いたように装うことで
自分を護っていました
目を背けていないフリは
しっかりと板についていて
同情を振り撒く表情が
能面のように張り付きます
押し寄せる波の音
柔らかな日差し
広がっていく荒地
続く菜の花畑
テレビが光を放つだけで
その映像には光はなく
誰か助けてください
僕は痛いくらいに平常だ
渦巻く不幸の中で
ただ一人健康だ
今日もまた
生きてしまっている
にやにやと
哀しく