蝶々
吉岡ペペロ



上陸し測量を始めるとすぐに汗はやんだ

ここまで来るあいだの乗り物のなかのほうが遥かに暑かったのだ

三人一組になってそのうち二人がレーザーポインターで位置決めをした

もうひとりがその距離を測っていった

俺はレーザーポインターを任されていた

山羊がでてきたら晩飯に食べちゃいましょう、

監督役の人間が和ませようと冗談を言った

俺は内心奴らに見つかるよりも

山羊の襲撃をおそれていた

だから山羊のことが気になってあたりを見回した

あしもとに蝶々がやすんでいた

おまえの国籍は日本なのか、

すると教科書にのっていた詩を思い出した

おまえは海を渡ってきたのか、

測量はあっというまに終わった

ゴムボートに乗ってさっさと島をあとにした

山羊、いなかったね、

蝶々がいましたよ、

ほんと?

蝶々鍋はまずそう、

監督役の人間がそう言って三人で笑った

ボートのエンジン音がやんだ

そしてしばらくお互いの偽名で呼び合いながら

あのクソ暑い乗り物が浮かんでくるのを待った


携帯写真+詩 蝶々 Copyright 吉岡ペペロ 2013-05-30 20:07:02
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