窒息する女性
はなもとあお
窒息する女性
孤立した母親は、子どもに手のかからない
母親側からの子どもの自立を願う
それは自然になされるように見えて
子どもは、家族のために、と自分の気持ちを殺す
泣きたい
駄々をこねたい
こころのままに
気兼ねなく
感情に身を任せたい
でも
お姉ちゃんだから
家族の役にたたないといけないから
母親ともなると
女性は
たくさんの顔を求められる
良い妻として
良い母親として
有能な働く女性として
お料理を上手く
清潔を保ち
綺麗にお化粧をして
立派な成人として
大人の身体を持ってしまうと
閉じ込められた幼児性は
なかなか満たされない
それは性欲と誤解されがちな言動となってあらわれるし
身体はもう子どもではないし
物で満たされるなら
少しは救われる
けれど
たいてい
そう簡単に
自分ひとりで
なんとかできない
両親にあまえ尽くして
自ら自立に向かう
親と喧嘩さえ自然にできるそんな友達を
眺めていて
うらさましさを覚えた
わたしにつけられた
女の子らしさが
とても鼻について感じた
それは
お人形遊びとか
ぬいぐるみ集めとか
みんなしていることから遠ざけられた
母親の価値観に既定された
ボーイッシュな
群れない
家事に精通した
未来の社会に住む女性としてのための
教育だった
満たされないのは気持ちだけ
たったそれだけのことで
わたしはまだ
未来に生きられない
ただ
自分の子どもとして生まれた
子ども達には
あまえることを許す
負の連鎖を断ち切るための努力だけはしている
母は、理想的な厳しい母親、で
弱音を許さなかった
強さ、正しさ、明るさ、だけで
失敗や暗さを許さない空気の中で
それらを見ないようにしていたわたしだけが
少しずつ窒息していった
誰も悪くない
子どもには明るい道を歩ませたい
社会に求められた
良妻賢母に
わたしがなれなかっただけの話
子どものまま
成長しなかったわたしは
まだ
わたしの中にいる
肉欲を嫌い
人を遠ざけ
人間に憧れながら