世界のはじまり
山中 烏流
記憶の足音がしたから
きみを差し出して
代わりにぼくを貰った
あいつは
自分のことを神様と呼んだけれど
どうだってよかった
毎日が消費されていく
時計の針が重なる度にそう思っては
忘れることを繰り返した
きみが居ても
当たり前のように、そこに居なくても
ぼくは朝食を摂るし
バイトにも行く
誰かの匂いが染み付いたシーツを抱いて
眠るぼくときみ
その姿を
ひっそりと思い浮かべりして
(世界のはじまりに)
きみが知らない顔で
知らないぼくと歩いていく
振り返っても
もう、何処へも行けないから
その姿を追っていく