天使は川辺にて
木屋 亞万

幼い娘が川沿いを歩きます
腰に下げた袋からぽとり
ぽとりと肝油ドロップが落ちます
絵に描いたような緑色の蛇が
蛇行しながら地面をなみ縫いし
ポップな模様を描き出します

幼子が歩くたびに
地面がキュッキュと鳴って
光るのは砂地が恋をしているからです
彼女は天使なのです
草を抜けば花が咲き
花はやがて羽を持ち
天へと帰っていくのです

天使が見詰めた魚は
ラムネの泡を吐くようになり
魚卵はビー玉のように
透き通った色を持つのです

雨が降って来たら雨の粒は
全て天使を避けます
彼女の周りをくるくると回って
ぽたりと地面に落ちていきます

肝油ドロップはバナナ味だったようです
油の泡がバナナになってふわり
ふわりと空へと浮かんでいきます
いずれは甘い雲になるでしょう
天使に見詰められた太陽が
赤く熟してきたので
今日もそろそろ終わりです

天使に見詰められる前に
あなたも逃げたほうがいい

彼女は夜の闇の中で
小悪魔に代わり毒を持ちます

花を一本手に取って
風に乗ってお逃げなさい


自由詩 天使は川辺にて Copyright 木屋 亞万 2013-05-27 23:13:08
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