青梅街道の事はよくわからない
虹村 凌

仕事を終えて青梅街道を転がっているときに
ふと鯛で釣られた海老みたいな女の事を思い出した
あの女はガリガリのジロリアンとならラーメン屋デートでも怒らない女だった
思い出すと腹が立ってきて
シメンドーにあるラーメン屋でゴテゴテのラーメンを喰ったんだ
別に満足なんかしちゃいねぇよ
腹が減ってた訳でもねぇのに詰め込んでゲボ吐きそうになって

月が綺麗ですね
あの
今でも公衆電話の光が手がかりなんです
月の爆撃機に乗って世界を
灼き尽くす夢を今でも
その
公衆電話の受話器の匂いが好きでした
公衆電話の受話器の手触りが好きでした
公衆電話の受話器のくぐもった音が好きでした
あの
あなたの声をあの受話器を通して聞きたいから
いまでも青梅街道を

あれお前いま何処に住んでるんだっけ
もうお前は青梅街道を転がっていないんだろう
苔が生える前にこの街を出て
どこかで
いやきっといま会ったら

仕事を終えて知らない男の車で青梅街道を転がるお前を
俺は青梅街道のどこかで見ていたのだろうか
俺は青梅街道の公衆電話をてがかりに転がり
苔が生える様に朽ちていく夢も見ず
いや目を開けたままで夢を見続けているのか
それともずっと眠っていたのか
お前とセックスすれば目が覚めるのだろう
ずっとわかっているんだ
お前とセックス出来たら俺はもう二度とお前の夢を見る事は無いんだ
細い色白の女に怯える必要も無いんだ

それはファントム?
いや、ファントムの事はわからない
それは宇宙?
いや、宇宙の事はわからない
私の体はレーゾンデートル?
いや、レーゾンデートルの事はよくわからない
それは、青梅街道?
いや、青梅街道の事はよくわからない

赤羽のボロアパートであのまま
バランス風呂でお前と溶けて流れてしまいたかったんだよ
そうでなければ青梅街道を転がって
カーブでハンドルから手を離して
いままでの子守唄を八つ裂きにして排水溝に流して
淡白で投げやりなセックスになるだろう
射精できるのか勃起するのかも怪しいセックスで流して
浅い眠りから目が覚めたら
もう二度と青梅街道は走らないと決めよう
もう二度と会わない約束をしよう
溺れ死ぬ前に
苔が生える前に
同じ太陽も同じ月も見ずに

それは、愛?
いや、愛の事はよくわからない
それは、恋?
いや、恋の事はよくわからない
それは、セックス?
いや、セックスの事はよくわからない
それは、童貞?
いや、童貞の事はよくわからない
それは、処女?
いや、処女の事はよくわからない
それは、呪い?
いや、呪いの事はよくわからない
それは、青梅街道?
いや。青梅街道の事はよくわからない
それは、私?
いや、君の事はよくわからない
もう顔も声もよくわからない


自由詩 青梅街道の事はよくわからない Copyright 虹村 凌 2013-05-26 02:23:13縦
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