五月とトカレフ
一尾

兆しばかりが高まっていく五月の

春という付箋を貼り付けておくには

些か暴力的な日差しを肌に感じているとき

わたしの柔い細胞がじりじりと焦げて

駄目になってる気がして

薄らと首筋に滲んだ汗も

暗い森に茂るプラタナスの樹液のように

べたついている気がして

いやに胸が詰まる

信号が赤でいっそ

他の色を知らないみたいに

動かないことに対して

驚くほどの無関心

でも昨日

他人が好きだと言ったものを

自分の気持ちのカーブに沿わせず

「いいね」って言って

適当に許してしまったことなどは

何度でも胃からもどして舐めるみたいに

反芻してる

あと二十台車が通って

まだ信号が赤だったら

足元のコンクリートに不自然に落ちている石に

トカレフっていう名前を付けて

何かを殺すための武器として

カバンに入れたい


わたしはあれ

きらいだな


自由詩 五月とトカレフ Copyright 一尾 2013-05-24 00:39:08
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