10年後
nonya


プチトマトの実がついたと
子供のようにはしゃぐ君の瞳は
まだ昨夜の喧嘩のことを
忘れていないよと言っている

後ろからのぞき込む
バツの悪い僕の視線は
幼いトマトと君の横顔の間を
おそるおそる綱渡りする

互いの手の内が
分かり過ぎるゲームは
どちらかが潔く負けなければ
いつまでも終わらない

今日の朝食は
かなり焦げたハムエッグと
苦いだけのコーヒー
息の詰まりそうなダイニングの片隅で
今日は君の大好きな
チーズケーキを買って帰ろうと思った

自分の荷物は自分で背負わなきゃと
偉そうに言っておきながら
君の荷物に甘えやわがままを
忍び込ませた僕の負い目は
ますます君を強くさせ
ますます僕を情けなくしていく

微妙なバランスのとり方とか
正確な距離の計り方とか
そんなことばかり学んだ
10年間だとは思いたくない

よく似たふたりと言われるけれど
君は今でも君らしく
僕は今でも僕らしいと
信じていたい

いつもの曲り角で
何気なく振り返ると
僕のあやふやな後ろ姿に
君はまだ手を振ってくれていた




自由詩 10年後 Copyright nonya 2013-05-21 19:44:49
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